top of page

Ship John Stories  Volume: 07

SJSN4 Cutter - Solid Brass   ~夢見てたカスタム・カッティングナイフ~

シップジョンを牽引するクラフトマンであるマイク・イライアス。彼には長年思い描いていた夢のカスタム・プロダクツがあった。それはスタンレー299のユーティリティ・ナイフをベースとしたカスタム・カッティングナイフ。今号はそのプロダクツを具現化させるためのストーリーを紹介しよう。

Mike Elias / マイク・イライアス

全米をワーゲンバスで旅した後、多くのインスピレーションを受けたオレゴン州ポートランドに移住。独学でパターンメイキングを学び、2006年にSHIP JOHNを創業。ブランドの名称は、マイクのホームタウンであるアメリカ・ニュージャージー州に旧くからある、美しい灯台の名から取られている。

 私が創業した当初から、たくさんの道具を自由に使って仕事をすることがこの会社の基盤となっています。そのひとつが、スタンレー299のユーティリティ・ナイフでした。このナイフを使い込むことによって、私はレザーの正確なカットを独学で学びました。(スタンレー299については、こちらを参照してください)299 は長年にわたり私にとって素晴らしいものでしたが、私は常に自分バージョンのカッティングナイフを作ることを夢見ていました。

Knife_Sketches.jpg

自身が理想とするナイフを製作することは長い間の夢。何度も何度もスケッチを描き、修正し、

その2次元的なアイデアを今度は3次元に置き換えてはまた修正を繰り返した

 私は長い間、このナイフのアイデアを落書きしたりスケッチしたりしてきました。これほどまでに愛着が湧き、頼りにしているものをどうすれば改良できるのか。299を使うたびに、使い勝手を向上させるためのヒントを考えようとしたのです。その中で気づいた大きな点は、299がバットのような形状のため、手の中で左右に回転しやすいということでした…。ただし、このナイフは私が鉛筆のように持つことを想定して作られたものではないので、元のデインのせいではありません。

 ここ数年、木彫りの道具を使っているうちに、北欧の伝統的な彫刻刀が柄にファセット(平らに磨いた面)を用いていることに気が付きました。そこで友人のジム(CADデータの設計士)と私は、私の2次元的なアイデアを立体的なオブジェに変換する際に、グリップを補助するためのファセットをナイフに取り入れるというアイデアで遊び始めました。最初の3Dプリントのプロトタイプを受け取ったときに、私達は何か特別なものを手に入れたと感じました。ナイフの長さいっぱいに施された深いアングルは、親指と人差し指の間に入り込み、ナイフを垂直にしっかりとホールドすることが出来る様になったのです。

MW_01689.jpg
_3SD1233.jpg
_3SD1278_edited.jpg
_3SD1289_edited.jpg

マイクのクラフトワークにはスタンレー299 は欠かせない。このナイフに強い愛着があり、素晴ら

しいプロダクトと思っていたからこそ、カスタム・カッティングナイフは誕生したのだ

 ジムと私は次の段階に向け、このナイフを金属をつかって製作出来る様にするために何度もデザインを修正し、3Dプリントを繰り返しました。そしてここから、夢を実現するための高いハードルが待ち構えていたのです。アメリカで真鍮を使って製造できるところを探し回りましたが、私が理想とする製品を加工出来るところを見つけるのは、とても困難でした。一見シンプルに見えますが、実際に機械加工を行う工程は非常に複雑なのです。

 

 2022年10月、日本への旅行中、私は友人のSonnyから彼の実兄であるMamoを紹介してもらいました。彼はもの作りの町として有名な東大阪市で、航空機や半導体部品といった超精密機器を製造しているマシンショップ(OKAMOTO.ss)を経営していて、私は彼が長年に渡り開発したシャワーヘッド(White Dragon)の製造現場を見学に行ったのです。その製品の素晴らしさは言うまでもありませんが、私達は他にもスーパーカーを運転したり、ディナーを楽しんだりと素晴らしい時間を共に過ごしました。

 2023年4月、再び日本を旅行したとき、私はMamoの会社の本社(岡山県真庭市)へ見学に行きました。そのとき、この会社のポテンシャルの高さにあらためて気が付き驚いたのです。そして、私が取り組んでいたカッティングナイフをここで生産してもらえたらどんなに素晴らしいだろうと、考えることを止められませんでした。私はKota(Ship John Japan)にそのアイデアを伝え、彼がMamoにプレゼンを行いました。驚いたことに、私が帰国した10日後には真鍮で製作された試作品がアメリカに届いたのです!加工はまったく完璧で、私達は生産に向けた最終調整に取り掛かりました。

_MG_1878.jpg
_MG_1845.jpg
_MG_1834.jpg
_MG_1820.jpg
_MG_1842.jpg
_MG_1827.jpg

アメリカで長く親しまれてきたユーティリティ・ナイフの伝統的なデザインと、日本ならではの繊細な職人技が見事に融合。機械加工だけでなく、ナイフケースの表面を一本一本全て手仕上げしているのが特徴。販売時、スタンレーの取り替え用の刃が100 枚付属する。

​現在は真鍮だけでなく、銅やジュラルミンを使ったものもリリース済み。極少数生産なので気になった方はお早めに!(こちらよりご購入可能)

 Ship Johnは、すべての製品をアメリカ国内で生産することを念頭に置いています。しかしながら、Mamoのような素晴らしい人や会社と仕事をする機会があれば、ソースのためにソースにこだわるよりも、製品として完璧となる道を辿ることの方が重要だと思います。このナイフをOKAMOTO.ssほど美しく作れるマシンショップは、世界中探しても他にないでしょう。

 

 こうして、ついに私が夢にまで見たSJSN4 Cutterを世に送り出すことが出来ました。このナイフを使う人達は、何年も何年も大切に愛用してくれるでしょう。安全に、そしてたくさん使ってください。私もさっそく仕事で使い続けたいと思います。

                                                    Mike Elias

bottom of page